テンカラとは

Ten colors of Tenkara. テンカラは人それぞれでよいと思います。伝統的漁法にこだわり竹竿編み笠スタイルもよし、カーボンロッドにレベルラインの現代テンカラスタイルもよし、さらにキャステイングやアワセの方法にまで目を広げると無数と言っていいほどのスタイルがあります。このブログ各項で私が紹介する方法はもっとも基本的で初心者の人でもとっつきやすい方法です。テンカラは日本で生まれた他の遊戯や技術同様、とてもシンプルな反面奥深く、極めることは容易ではありません。突き詰めていくと秘儀、奥義の世界となり、そこが欧米で人気となっている所以であると思います。まず私が紹介する方法で初めてみてテンカラの奥深さを知り、どっぷりとはまってみてはいかがでしょうか。


テンカラの歴史と北海道

テンカラという釣法は少なくとも300年ほどの歴史があるといわれています。主に本州の渓流域でイワナ、ヤマメを効率よく釣るために川漁師が始めたものと考えられています。テンカラという言葉の由来はいまだはっきりとしません。さらに最初に文献に登場したテンカラという言葉は、アユの毛バリ釣り(現在のドブ釣り)のことでありました。そのアユの毛バリ釣りは当時山岳渓流で行われていた川漁師の方法(現在のテンカラ)を、江戸時代の武士が平地で真似たものです。
現在「テンカラ」と呼ばれている釣法は日本各地の山間集落単位で行われていたため、フライフィッシングのように体形的に研究されることも無く、個人的に受け継がれてきたのみで(これがとても悪い意味で日本的)公に楽しまれるものではありませんでした。そのように長らく山奥に引きこもっていたこの釣法が一般の釣り人に紹介されるようになったのは、昭和40年代に出版された「渓流の釣り」「西日本の山釣り」などの書籍でした。ここで初めてレジャーとしての「テンカラ釣り」が誕生しました。
それから約50年、今では一般的になっているとはいえ、私はほとんどテンカラ釣りをしている人を見たことがありません。ここ北海道ではその気候と地形の影響からか、フライとルアーがとてもポピュラーです。特に川でも湖でもルアーマンが大勢います。その理由として、出版されてきたテンカラ関連の本の多くがヤマメ、イワナを対象魚とした繊細な釣りと紹介してきたことが挙げられます。多くのテンカラに関する書籍を読んできましたが、雄大な北海道にはあまりそぐわない「極めて本州的な」釣りという印象を私は抱きました。ですが今後北海道でもテンカラ人口は増えていくでしょう。道具の進歩もありますし、なにせ時代にマッチする環境に配慮した釣り方なのですから。


テンカラの特徴

しばしば、Japanese fly fishing と訳されますが、フライとの大きな違いはその道具のシンプルさです。竿、糸、毛バリの3つでできるこの実践的な無骨さがテンカラの最大の特徴であり美学であると言えます。なぜリールが不要だったのか。それは竹の存在が大きく、しなやかで軽量な長竿を気軽に入手できる環境だったからです。
毛バリは地域によっていろいろな形状のものが使われていたようです。地域、釣り人それぞれで違い、他人には決して見せない川漁師もいたようです。伝承毛バリを紹介しているサイトや書籍も多数ありますので興味がある人は調べてみると面白いでしょう。
ラインは馬素とよばれる馬の尻毛を撚り合わせたテーパーラインが使われていました。現在では化繊のラインが主流で各タイプが販売されています。
現代テンカラはより軽量で機能的になった古代の釣り方であると言えます。


テンカラに適した季節と気候

テンカラ釣りは毛ばりで釣ります。毛ばりは昆虫を模したものであり当然昆虫の動きが活発で水面付近に多く現れる季節が、その場所のもっともテンカラに適したシーズンとなります。それは川面を見れば誰でも理解できると思います。水面に落ちる昆虫がたくさんいて、それを食べにくる魚もたくさんいる、そんな状況がテンカラにベストな季節です。暖かくなりはじめる春、まだまだ虫が多く魚も食欲旺盛な秋、この二つが簡単に言うとベストシーズンです。
晴、曇、雨、強風、無風、様々な気象条件のもとであなたは釣りをすることになります。テンカラにとって大敵となるのはやはり強風です。風の影響を受けにくい細めのレベルラインを使い水面付近を這うようにサイドキャストさせると何とか釣りにはなるのですが、ストレスが溜まる厳しいコンディションです。風は渓により吹き方が変わります。川に降りてみると意外に風があったりなかったりします。天気予報からその日風の影響を受けにくい川に行くということができるようになるとあなたもベテランでしょう。どこに行ってどうにもならないような強風のときは家でゲームでもしていましょう。無理をしても仕方がありません。
大雨も釣りに影響が出ます。キャスティングが難しいのはもちろん、水面直下を流すテンカラでは魚にアピールするのが困難です。それ以上に大雨は増水の危険もあり早々に切り上げて家でゲームということで。


私がテンカラを始めた理由

テンカラのアドバンテージは数多くありますが、私が深くのめり込んだ理由は自然環境にほとんど影響を与えない、ということです。
針をバーブレス(返しをつぶした針)にするとさらに魚へのダメージは少なくなります。ネットで掬うと多くの場合勝手に針がはずれ、魚に触らずにリリースできることもしばしばです。またバーブレスフックは万が一ハリスが切れて毛バリを魚の口に残してしまった場合も、自然に外れやすいので捕食できずに死んでしまう可能性も減ります。テンカラの毛バリは水面直下を流れるので根掛かりもほとんど起こりません。河川環境への影響は最小限に留めることが可能です。
私はルアーフィッシングから釣りに入りました。川や湖でルアーを失うたびにショックを受け、また水中の環境を悪化させてしまったことへの罪悪感と出費で暗い気持ちになることの方が多かったように思います。しばしばニュースで目にするルアーがくちばしに刺さった水鳥の映像も私を苦しめました。釣りをやめようかと思い悩んだ末にたどり着いたのがこのテンカラ釣法です。
正直今でも大き目のプールを目にすると「ルアーだったら大きいのが釣れるかも・・・」と思ってしまうこともあります。ですが「釣り方」と「持続可能性」を考えるとテンカラ以外の釣り方に興味が無くなりました。
このブログを見てテンカラを始める人が増えると嬉しいです。
竿を持ち、沢を歩き、魚や鳥に出会う、それは字面以上に素晴らしいことです。